2021年冬の時計オークションを著名オークショニアが振り返る

2022.02.19

世界で行われる時計オークションの情報をお届けするwebChronosの連載記事「グローバルウォッチマーケットからの最新ニュース」。
今回は、老舗オークションハウス「ボナムズ香港」の時計部門国際ディレクターを務めるティム・ボーン氏が、今冬に開催された時計オークションを振り返る。

ティム・ボーン(ボナムズ香港):文
Text by Tim Bourne(Bonhams Hong Kong)
2022年2月19日掲載記事

ティム・ボーン

ティム・ボーン[ボナムズ香港 時計部門国際ディレクター]
20年以上の経歴を持つ高級時計の専門家であり、ボナムズ香港を拠点に活動する時計の国際ディレクター。世界最古のオークションハウス「サザビーズ」において、その拠点であるロンドンと香港における時計部門の国際責任者を経て、クリスティーズ時計部門の国際共同責任者として活躍した後、ボナムズに加わった。


記録的な結果を生んだ2021年の時計オークション

 時計のオークションにおいて、12月と1月は閑散期として知られている。2021年は、世界の時計オークションにとって非常に重要な年となり、すべての著名なオークションハウスで記録的な価格を達成した。

 熱狂的に入札が行われる光景は見る者の心を奪い、時計市場全体が驚くような上昇傾向を示した。稀少なモデルや、金回りのいいコレクターが好んで着用することを熱望するような、ファッショナブルなアイコンに対する需要が高まり、新たに参入した少なからぬバイヤーたちが積極的に資金を投入するようになった。

 これは、オークションハウスがデジタル分野を改善し、入札者や購入者が快適な体験をできるようになったことに加え、仮想通貨の急成長とその普及も要因である。イーサリアムや、その他の特殊な仮想通貨の取引を行って巨額の資金を得た起業家たちは、世界中のオークションに参加し、さらに莫大な富を得ることになったのだ。

 今回は、ボナムズが2021年12月に販売した時計の中から“比較的普通”のモデルを紹介し、さらに2022年はじめの時計オークションに出品するコレクターズピースを紹介しよう。

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」Ref.25686
ロット番号:63。落札価格:37万2902USドル(約4298万円、1USドル=115.27円、2022年2月17日現在、以下同)。

 ロンドンで開催されたオークションで目を引いたのが、1992年に製造されたオーデマ ピゲの素晴らしい時計のひとつ、「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」Ref.25686である。爽やかなブルーのマザー・オブ・パール文字盤を備えた、わずか26本製造されたうちの1本だ。想像の通り激しい入札競争が行われ、最終的に37万2000USドルで落札された。時計自体にはかなりの使用感があり、表面に擦り傷やへこみがあったが、もちろんこの個体は本物で、委託者に愛用されていたことが分かる。

コスモグラフ デイトナ

ロレックス「コスモグラフ デイトナ」Ref.6241
ロット番号:64。落札価格:22万489USドル(約2541万円)。

 また、同じくロンドンのオークションで他に注目すべきは2本のロレックスで、ひとつは非常に珍しい「コスモグラフ デイトナ」Ref.6241。このリファレンスナンバーのモデルは、ブラックの文字盤に14Kゴールドのケースを持つ稀少なモデルだ。さらに、もともと所有していたファミリーの名前によって、その魅力と訴求力が倍増し、約22万USドルで競り落とされたため、注目に値する1本となった。

サブマリーナ

ロレックス「オイスター パーペチュアル サブマリーナー」Ref.116619LB
ロット番号:23。落札価格:4万7755USドル(約550万円)。

 もうひとつは、特徴的なブルーのベゼルと文字盤を持つことから「スマーフ」の愛称で親しまれている、よりモダンなロレックスの「オイスター パーペチュアル サブマリーナー」Ref.116619LBだ。2015年の製造からわずか6年(オークション開催時)だが、将来的にはとても高い価値を持つモデルになることは間違いなく、今回のオークションでは約4万8000USドルで落札された。自身の息子や孫のために保管し、称賛すべきモデルだ。

パテック フィリップ クロノグラフ

パテック フィリップ Ref.5070
ロット番号:903。落札価格:20万8629USドル(約2404万円)。

 同じく12月に、香港での時計オークションに出品されたのは、美しいパテック フィリップのプラチナ製Ref.5070である。出荷時のまま密閉状態で保管されていたため、この美しい時計を所有していた人は恐らくコレクターというよりも投資家だろう。激しく競られ、最終的には約20万9000USドルで競り落とされた。この2年間で急激に価値が上昇したRaf.5070を、未開封で保管しておいたコレクターの決断は、明らかに賢明であった。

 最後になるが、2022年2月にパリのグランパレで開催されたボナムズのオークションでは、非常に人気が高く入手困難なブランド、ローラン・フェリエの時計が出品された。同ブランドはファンを増やしていて、いま非常に大きな需要がある。

ガレ クラシック トゥールビヨン

ローラン・フェリエ「ガレ クラシック トゥールビヨン」
ロット番号:44。落札価格:9万2752USドル(約1069万円)。

 18Kローズゴールドケースを持つトゥールビヨン搭載モデルはローラン・フェリエの代表作であり、美しい18Kホワイトゴールド製のモデルとともに2本の作品がこのオークションに出品され、大きな注目を集めた。

 寅年である2022年は、時計業界にとって心躍る1年になるはずだ。


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